SHARE! ライナーノーツ
「SHARE!」の歌詞は、
人々の涙を吸ったパレスチナの大地で生まれた。
by Ryokyu Endo
これまで、インストルメンタル音楽しか創って来なかった僕が、
この曲に詞をつけざるを得なかったのにはわけがある。
この時僕は、ガザ空爆中のパレスチナにいたのだ。
連日、ガザの子どもたちは空襲にさらされ傷つき死んでいた。
そのわずか数十キロしか離れていない土地で、
僕は、怒りと悲しみを無力感の中に押し込め、
広島からエルサレムまでを巡礼する、
アースキャラバンの実現に向けて活動していた。
このときの僕には、少しでも未来に希望を感じるような言葉が、
何よりも自分自身に対して必要だったのだ。
ある日、活動のさなかに、空襲で怪我を負った子どもの見舞いに訪れた。
それはパレスチナ人居住地である、東エルサレムの病院だった。
人々でごった返す病院の中、
看護婦をつかまえて許可を得て僕は、病室に入った。
そこには、人の良さそうな小柄なお父さんがいた。
そしてベッドには、
10歳ぐらいの少年がぼんやりした顔で横になっていた。
少年を見るなり、僕は言葉を失った。
彼の足は膝から下がなかった。
僕には何もできなかった…。
ただ泣くことしかできなかった。
泣いて子どもの身体をさすり、
そして抱きしめることしかできなかった。
この少年は、もう2度と二本足で歩くことはできない…。
父子にかけるどんな慰めの言葉も、僕には持ち得なかった。
"子どもたちが誰一人傷つくことのない世界を願わない人はいない。"
涙でかすむ病室の中、そう自分に言い聞かせることで、
アースキャラバン・テーマ曲"SHARE!"の詩は生まれた。